第67章 【東峰 旭】Unstable us.
帰宅して、生徒達との交換ノートに目を通す。
東峰くんのノート。
今日も空白を見つけて炙り出す。
「・・?」
読めない。
好きと書いているのか、それとも他の愛の言葉が書いてあるのか。
薄っすらと浮かび上がっているが、明確でないその文字は私たちの関係を表しているようだった。
東峰くんの気持ちは、単なる大人への憧れじゃないよね?
私は携帯の画像フォルダを開く。
そこには今までに東峰くんからもらった炙り出しのメッセージが保存されている。
“好きだよ”
今まで嬉しくてたまらなかったその言葉も今の私には苦しい言葉でしかなかった。
それは私に向けられた言葉なの?それとも大人の私に向けられた言葉なの?
本当の好きって何?
本物の愛って何?
もしこの胸の痛みが人を好きな証拠なのだとしたら、東峰くんは同じ痛みを感じているの?
携帯で東峰くんの電話番号を表示する。
“卒業するまで連絡は取らない”
二人で交わした約束が頭を過ぎり、私は携帯を閉じた。
会いたい。
ただそれだけ。
たったそれだけの事も許されない私たちの恋。
せっかく同じ気持ちになれたのに、
どうして私達は堂々と気持ちを伝えられないの?
どうして手を繋いで街を歩けないの?
どうして・・・会えないの?
ポロポロ流れ落ちる涙。
涙で出来たスカートのシミをただボーッと見つめて、声も出さずにただただそのシミを大きくした。