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【★ハイキュー!!★】短編集

第67章 【東峰 旭】Unstable us.



仕事が終わり、私は一冊のノートを持って家路を急ぐ。
一人暮らしの部屋は帰ると真っ暗で少し寒い。
カチッという音と共に部屋が明るく照らされて、私は少しだけホッとする。
スーツを脱がなきゃいけないし、お腹も空いている。
けど、スーツがシワになるとか、お腹が悲鳴をあげているとか、そういうのは今はどうでもいい。

カバンから持ち帰ったノートを取り出し、勢いよく最新ページまで開く。まるで、休載していたお気に入りのマンガの最新話を見る時みたいに。



今日の晩飯は何ですか?
俺は昨日シチューでした。今日は何かな。
最近食べても食べてもお腹が空きます。
ひろか先生は食べ物では何が好きですか?


たった4行の文章を読んで、胸いっぱいになる私はもう病気だろうか。
彼の大き目で少し崩れた字がとても愛おしくて、私はついノートを抱きしめてしまう。

「あっ、ノートが・・・」

つい力を込めて抱きしめたために、少しノートが歪んでしまった。私はすぐにお気に入りのピンク色のペンを取り出してお返事を書く。

彼にお返事を書いて、やっと私のスーツはハンガーへかけられて、シチューの具材たちは調理をされる。

出来上がったシチューを食べながら、またノートを見る。1日1回の彼へのメッセージ。これでいいかな?と何度も確認する。本当はもっと書きたいことがたくさんある。
だけど、私たちの恋は決して公にしてはならない。





「今日、三浦先生がお休みなので自習になります」

私は生物の三浦先生の代わりに3年3組の自習監督を任されていた。指定されたプリント用紙を配ると、静まった教室にカリカリカリと生徒達がペンを走らせる音が鳴り響く。

「先生!」

私が顔を上げると、東峰くんが挙手していた。
私は平常心を保ちながら、彼の席へ行く。

「これ、合ってますか?」

「生物か…私分かるかな・・」

彼が指差す所を見ると、そこには“先生は俺のこと好き?”と書かれていた。

「…合ってます。正解です」

私がそう言うと東峰くんは嬉しそうに照れ笑いして、私は小さな声でバカと言う。
人の目を盗んでこんな些細なやり取りするだけでも私はとても幸せだった。



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