第67章 【東峰 旭】Unstable us.
次の日の昼休み、私は廊下で生徒に声をかけられた。
「ひろかちゃ~ん!」
「こらっ!先生って呼びなさいっ!!」
生徒の数人はいつも私の事をちゃん付けで呼んだり、からかったりする。なめられてはいけない!と、背筋を伸ばし真剣な目で生徒達を見上げた。
「ひろかちゃん、ちっこくて可愛い~」
「デートしよ?デート!ねっ?いいでしょ?」
「だから、先生って呼びなさい!!それにデートもしませんっ!!」
私がどんなに怒っても生徒達は笑うばかり。
「ひろか先生、さっき教頭先生が呼んでました」
声がする方を見ると、そこには東峰くんが立っている。
「あっ、今行きます!」
私はからかう生徒達にもう一度、先生と呼びなさいね?と忠告をしてその場を去った。
「ひろか先生、こっち…」
東峰くんが手招きしている視聴覚室に入るとガタンと扉が閉まる。振り向くと、そこには顔を真っ赤にした彼がいて、朝のホームルームで返したノートを差し出した。
「・・これ本当ですか?」
そこには炙り出しされた、私の文字。
はっきりと好きと言う言葉が浮き出ていた。
「俺、昨日先生が弱っている所に付け込んで、あんな事しちゃって…すごく後悔してて。でも、・・でももし先生も同じ気持ちなんだったら嬉しい・・です」
赤く染めた顔を必死に腕で隠している東峰くんを見て、私の心臓はまたぎゅーっと縮まった。
私は東峰くんの傍にいって、大きな手を握った。
「気持ちは・・本当、です」
ゆっくりと顔を上げると、そこにはホッとしたような笑顔を見せる東峰くんがいた。
「どうしよう…。先生、俺・・・幸せ過ぎて死んちゃうかも…」
東峰くんはそう言って私をぎゅっと抱きしめてくれた。