第67章 【東峰 旭】Unstable us.
「はぁぁぁ、どうしよう・・・」
私はとりあえず正気に戻ろうと、生徒達との交換ノートに返事を書いた。
このノートは生徒一人一人との交換ノート。私が生徒達と交流できる様にと半ば強引に始めたものだ。
一人、また一人、返事を書いていく。
そして、東峰くんのノートの番が来て一瞬躊躇しながらも、大きく深呼吸をしてからノートをめくった。
いつもは長めに書いてある文章が今日は短かった。
最後の1行が消しゴムで必死に消した感じになっていて、つい出来心で次のページを開き、芯で優しく炙り出してみた。
「ひろか先生の事が・・・す・・・き・・」
炙り出てきた文字をしばらく眺めてから、急に顔が火照り始めた。
「うそ…、東峰くんが私のこと・・?」
私の心臓がぎゅーっと縮んで、同時に口元は緩んでいく。
私は気づいてしまったのだ。
自分が東峰くんに恋をしてしまっていることを。
30冊近くある交換ノートも、東峰くんのだけはドキドキしながらお返事を書いていた。
朝のホームルームでは一番初めに彼の席に目を向けた。
廊下ですれ違ったら、なんだか一日頑張れる気がしたし、落ち込んで帰った日は彼の文字に癒されていた。
あの時のキスだって、東峰くんだから…東峰くんだから受け入れたんだ。
「シャープペン、シャープペン!!」
私はカバンからシャープペンを取り出してノートに書き込んだ。
“私も東峰くんが好きです”
そして、消しゴムで消した。