第67章 【東峰 旭】Unstable us.
「ただいまー」
私は誰もいない一人暮らしの部屋に帰った。
ふぅーとため息をついて、ソファの上に腰を下ろす。
鏡で腫れた目を見てため息をつき、その後でそっと唇に指先を当てた。
「どっ、どうしよう…ヤバイヤバイヤバイ!」
さっきの出来事を思い返して、恥ずかしくなり、クッションに顔を埋めた。
さっきの出来事。それはつい数時間前・・・
私は赴任した烏野高校で初めての授業を行った。毎日毎日遅くまで学校に残って考えた授業案。生徒のためにと頑張って授業を行ったが、全然うまくいかなかった。
これから教師としてやっていけるのか、この仕事は向いていないのではないだろうかと自信を無くし、教室で泣いていた所を生徒の東峰くんに見られてしまったのだ。
これだけでも恥ずかしいのに・・・。
私は生徒の東峰くんとキスをしてしまったのだ。
いくら精神的に弱っていたからと言って、生徒と…生徒とキスしちゃうなんて。
私はまたあの時の事を思い出す。
東峰くんの優しい声。暖かい体温。大きな身体。照れた顔。そして、唇。
「わぁぁぁぁぁ!!」
私はクッションに顔を押し付けて叫んだ。
足をバタつかせると、隣の部屋からドン!と壁を叩かれた。