第66章 【東峰 旭】過ちて改めざる是を過ちという
ガラッ
急に教室の扉が開くと、そこには東峰くんが立っていた。
「えっ、ひろか先生?何して・・・」
私は咄嗟に背を向けて、涙をゴシゴシと両手で拭った。
「・・・先生?」
ガタンと机に当たる音がして、彼がこっちに近づいて来ていることに気が付く。
「待って!こっち来ないで・・・」
私は彼に背を向けたままそう言って、必死に溢れ出す涙を何度も何度も拭った。
「ひろか先生、そんなに目を擦ると、腫れちゃうんじゃ・・・」
東峰くんはそう言うと、私の元に来て優しく私を抱きしめた。
「ばあちゃんがいつも俺にこうやってくれたんです」
東峰くんの大きな手が私の背中に回された。
「・・・来ないでって言ったのに」
「えっ、…あっ、すいません。でも、先生泣いてるのに知らん顔出来ないし…」
東峰くんの大きい身体が私を包み込んで、暖かい東峰くんの体温と冷たくなった私の体温が入れ替わり、次第に同じ温度に変わっていく。
「えっと、その、俺見てないんで泣いていいです…よ?」
「・・・うん」
私はもう一度東峰くんの胸の中で泣いた。
だけど、その涙はさっきまでの悲しい涙とは違うような気がした。