第66章 【東峰 旭】過ちて改めざる是を過ちという
「佐藤先生、頑張ってくださいね」
赴任してから数か月が経ち、私はついに授業デビューをした。毎晩寝不足になりながら仕上げた授業案。生徒達がおもしろいって思ってもらえるような授業がしたい!そう思って色んな工夫を入れた。
けど、結果は全然ダメだった。
「佐藤先生、ここは高校です。義務教育ではなく、彼らは自分の意思で学びにきているんです」
教科担当の先生にもそう言われた。
授業を楽しく受けてもらいたいと思って、イラスト付きのテキストを作ったり、途中でワークを入れたりした。けどそれはきっと私のエゴ。基本の授業が出来ていないのに、楽しむことばかりに目を向けてしまった自分が情けなくなる。
これが教育実習の時だったら通用したのかもしれない。けれど、私は本採用された教師だ。生徒達の将来がかかっている授業なのだと改めて実感させられた。
私は誰もいない夜の教室の教壇に立ち、誰も座っていない机を見渡す。
本当に私は教師に向いているんだろうか。
自分が情けなくて、思わず涙が溢れてくる。
本当にここに立っていてもいいのか。
生徒達の大事な将来。私が足を引っ張っているのではないだろうか。
そんな事を考えると、さらに涙が止まらなくなる。