第8章 【影山 飛雄】難題
次の日、佐藤に勉強を見てもらう約束をした。
毎日部活までの時間、俺の席が待ち合わせ場所。
「んー。この時間だけでは間に合わなさそうだなぁ」
そう言って、佐藤はノートを取り出した。
毎日、佐藤が課題を作ってきて、
俺が家でそれを解く。どうしても解けない時に見れるように
回答も書いておいてくれていた。
答えを見てもわからない所を部活までの時間に教えてもらう。
「ここが意味わかんない」
前日の課題でわからなかった問題の説明を受けていた時、
また邪魔者が現れた。
「佐藤さーーん!俺にも勉強教えてー!」
「日向…てめぇ!」
邪魔すんじゃねー!と日向に殴りかかろうとした俺の腕を
佐藤は掴んで止めていた。
「一緒にやろう?…ね?」
佐藤がそう言うなら…と3人で勉強を始めた。
「そうそう。日向くん、合ってるよ!」
やったー!と隣で騒いでいる日向にイライラする。
けど、それよりも日向に笑いかける佐藤にもっとイライラする。
「…部活行く!」
俺はイライラの正体が解らないまま、日向達を置いて部活に向かった。
「「おつかれっしたー」」
部活が終わって、早々に校門に向かうと
そこには佐藤の姿があった。
「お疲れ様。はい、これ」
佐藤はいつものノートを俺に差し出した。
「今日、急に部活行っちゃうんだもん。
部活終わるまで待っててあげたんだぞ?感謝してよ?」
「おっ、おぉ…」
俺は佐藤から目線をそらして、ノートを受け取った。
「あっ!ひろかちゃーーーーん!」
後ろから日向の声がした。
いつの間にか日向は佐藤のことを名前で呼んでいた。
俺だって、呼んだことないのに。
「…すっげぇイライラする」
「えっ…?」
「佐藤といると、すげぇイライラする。
けど、佐藤が笑ってるとこっちもなんか、俺も笑っちまう…
良くわかんねぇ気持ちになんだよ…」
日向がこっちに向かってきてるのを察して、
俺は1人で学校を出た。