第64章 【黒尾 鉄朗】Eighteen
「黒尾さん、今度はいつ来てくれるんスか?」
「そーっすよ!引退してから全然来てくれないじゃないっすか!」
帰り道そんな事を後輩達から言われ、俺は勉強で忙しいんだよ。と返答する。
「クロ、全然勉強してないじゃん」
研磨が見透かしたような顔で俺を見上げる。
うるせーよ、と髪をくしゃっとやると、たまには来てよ。と研磨が俺にしか聞こえない声で言った。
「やっぱバレー楽しいな!」
夜久が伸びをしながらそう言う。
「夜久、レポートやばいんじゃなかったのかよ」
「は?あんなの、お前が今日予定入れないようにするための嘘だよ。ちゃんと終わらせてるっつーの!」
夜久はニッと笑って、バーカと舌を出した。
「じゃーな!」
俺とひろかはみんなと別れて歩き出す。
今日の計画はひろかがしたものだと分かっていたけど、今更恥ずかしくて、お礼を言えずにいた。
「ねぇ、鉄朗?」
「あ?」
「寂しくない?」
「あぁ」
「そっか。良かった」
ひろかが言いたい事は伝わってきた。
熱くなれるバレーから離れて、面倒みなきゃいけない後輩達と離れて、自分の存在意義を見いだせずにいた俺にひろかは気づいていたんだ。
俺はひろかの手を握る。
「まぁ、今までお前の事かまってやれなかったし、これからはお前に時間使うことにするわ」
ひろかはやった!と笑った。