第64章 【黒尾 鉄朗】Eighteen
どんどん周りが大人の階段を登り始めて、まだバカやっていたいのに、もうそんな歳じゃないだろ?と勝手に空気を読んでしまっていた。
大人になりたくない。
なんて、俺はピーターパンかよ。
空気を読んでいる時点で、俺は大人になっているんだ。諦めろ。
18歳。
まだ成人じゃないし、大人と呼ばれるわけでもない。けど、18歳は子供の中でも特別な年齢。
男は結婚できるようになる。ひろかとだって、今日これから役所に行って婚姻届を提出することだって出来る。
運転免許だって取れる。車運転とか、カッコイイだろ?
ひろかを助手席に乗せて、どこへでも連れて行けるんだ。
まぁ、たまには研磨達を迎えに行ってやってもいい。ちゃんと、その車カッコイイ!って言えばな?
パチンコやホテルだってOKだし、成人映画だって観れるんだぜ?大人な本やゲームだって買える。
羨ましいだろ?
俺は社会から少しだけ認められる年齢になったんだ。
これからどんどん出来る事が増えていくんだ。
引退して空っぽになったのは、これから出来ることを詰め込むためだ。そう思うと自分の空っぽなスペースもこれからの希望に見えてくる。
さっきまで、後ろ向きだった考えがこんなにも前向きに変わったのは、左手にひろかの体温を感じるからだろうか。
「なぁ、俺プレゼントいらないって言ったけど、やっぱり欲しいものあったわ」
「何?いいよ!何でも言って?」
「・・・本当に何でも言っていいんだな?」
俺は自分が欲しいプレゼントを口に出した。
ひろかはバカと笑った後に、繋いでいた手をぎゅっと強く握った。
TheEnd
あとがきあり