第64章 【黒尾 鉄朗】Eighteen
「鉄朗~!こっちこっち!」
校門で俺を呼ぶひろかの姿が見えて、俺は何だよ。と声をかける。ひろかはふふふと笑って俺の手を引っ張った。
ひろかに連れてこられたのは体育館。
「せーのっ!!」
ひろかの掛け声と共に体育館の扉が開いて、パンパンパン!と大きな音が鳴り響いた。
「「黒尾(さん)!誕生日おめでとうございます!!」」
視界に入りこんできたカラフルなテープを払いのけると、そこにはバレー部のみんながいた。
「お前ら…何やってんだよ」
俺がそう言うと、いいからいいから!と夜久とひろかが俺の手を引いて、体育館の中に連れ込む。
じゃーん!とひろかが声をかけると、芝山がゆっくり慎重にケーキを運んできた。
俺は周りから急かされて、ケーキの上のろうそくの火を一気に吹き消した。拍手とおめでとう!という言葉が飛び交い、ひろかはろうそくをキレイにケーキから抜いた。
「準備はいい?」
「「おぉーー!」」
部員たちはひろかの掛け声に握り拳を上に上げた。
すると、俺の背後からリエーフが近づいてきて、グイっと後頭部を押した。俺はケーキに顔が当たるスレスレの所で踏みとどまる。
「リエーフ、お前。随分なことしてくれんじゃねーか」
俺の言葉に少し怯んだリエーフだったが、夜久がいいからやれ!と参戦してくる。さすがに2人の力には勝てなくて、俺の顔面はケーキのど真ん中にダイブした。
体育館に歓声が沸き起こり、俺は生クリームだからけの顔を上げた。前が良く見えなかったが、誰かが写メを取っていて、誰かが笑い転げていて、芝山がすいませんすいません!と謝っていた。
「ねぇ!バレーしましょうよ!久しぶりにみんなで!!」
リエーフと犬岡がそう言いだして、ネットを張り始めた。
久しぶりのバレーは本当に楽しくて、時間を忘れて何回もゲームをした。