第64章 【黒尾 鉄朗】Eighteen
校門をくぐってまっすぐ教室に向かう。
教室ではクラスメイトが思い思いに過ごしている。勉強しているもの、昨日のテレビの話で盛り上がっているもの、音楽を聴いているもの。俺は一息おいてから廊下と教室の境界線を跨ぐ。
「うーっす」
だるそうに挨拶すると、数人のクラスメイトから挨拶が返って来る。ガタンと音を鳴らして、自分の席について頬杖をつく。特にすることがない。朝から勉強なんてしたくないし、特に話したいこともないし、音楽なんて聴かないし。
昔は教室に入ってバカみたいに騒いでいた気がする。夜久と一緒に教室に入って、俺が夜のお供の話をすると夜久が朝からうるせー!と殴って来る。俺がボケて夜久がツッコむ。それを見てクラスメイト達がそれにのっかてくる。
昔は・・・な。
「夜久ー、おはようっ!」
その声に反応して、俺は顔を上げる。
夜久と目が合って自分の席に座った夜久の元に歩み寄る。
「黒尾~、今日の課題やったか?」
「まぁ、一応な」
ならよかったと、カバンを机の横にかけ、夜久は俺を見上げた。
「明日提出のレポート全く手付けてねーから、今日は寄り道しないで帰らないとな・・・」
な?とダメ押しをされる。
ひろかとの予定もないのに、親に帰りが遅くなると言ってしまった手前、夜久でも誘って遊びに行こうと企んでいた。俺たちは受験生。11月のこの時期に遊びに行く奴なんてそうはいない。夜久も進学予定だからここ最近話す内容は勉強の話だ。
教室の空気感も昔とは違う。
昔は自分の誕生日が近づくと、クラス中にアピールしまくって、たくさんプレゼントもらって、今日1日は俺が法律だ!なんて言って、好き放題やっていた。
昔は・・・な。