第64章 【黒尾 鉄朗】Eighteen
ピピピピピ
携帯のアラームが今で何度目だろうか。
スヌーズ機能。
初めはなんて素晴らしい機能なんだと思ってたが、5分毎に俺を起こすこの音にイライラするだけじゃなくて、寝て起きてを繰り返したせいか全然スッキリしない。
結局母親に怒られて起きる。
なら、初めから目覚ましなんて使う必要ねーんじゃね?なんて思う。昔は眠くても起きてたのにな。自分で起きなきゃって思えたのにな。
昔は・・・な。
母親がうるさいので布団から出て、洗面台の前に立つ。
顔を洗って鏡を見る。今日の寝癖具合がいい感じだったらテンション上がるし、いまいちだったらチッてなる。今日はいまいちの方だった。
チッ
俺はワックスを手に取って、いまいちな寝癖をいい感じの髪型にセットする。
歯を磨きながらまた欠伸をする。
ペッ
吐き出した歯磨き粉に血が混ざっていて、歯肉炎か?なんて他人事のように水と共に流れる血を見送った。
「鉄朗?今日はひろかちゃんとデート?」
「えっ・・・あぁ、まぁ」
「じゃぁ、お誕生日ケーキはいらないわね?」
「あぁ」
高校3年にもなって、誕生日ケーキなんていらねーよ。とか思いながらも、誕生日を祝う気があることが伝わると悪い気はしない。
母親が言ったひろかちゃん。
俺の彼女だ。特に約束はしてなかったけど、当日は一緒に過ごすもんだと思っていた。けど、2日前に当日は外せない予定があるから、今度の日曜日にちゃんとお祝いしようと言われた。
別にそれでいい。あまりそう言う事は気にしないタイプの人間だ。欲しいものもない。ひろかがおめでとうって言ってくれればそれでよかった。もちろん、昨日の夜の電話でちょうど深夜0時を跨ぐときに、おめでとうと一番先に言ってもらえた。それで十分だ。
「いってきまーす」
学校までの道のりが昔と比べて長く感じる。
昔はあっという間に学校に着いたのに。バスや電車も混雑してる。昔はもっと空いていたのに。
昔は・・・な。