第62章 【花巻 貴大】男と女
「あっ!!バスケットボール忘れてる!」
俺たちが通りかかった公園にはバスケットボールが転がっていた。
「ね?勝負しようよ!アイス賭けて!!」
「のった!!」
俺たちは軽くストレッチをして、1on1を始めた。
「手加減してやろうか?」
「バスケ部エースなめんなっ!」
佐藤も女子にしては身長は高い方だったが、もちろん俺なんかよりずっと小さくて、スポーツ全般得意な俺は負ける気がしない。
「はぁーーー、熱いーーーー」
夏の日差しが俺たちを照り付け、お互い汗が流れ落ちていた。
「ちょっと休憩!」
そう言って佐藤は着ていたセーターを脱いだ。
ブラウスを二の腕半分くらいまでまくり上げる。
いつもセーターを着ているから気づかなかったけど、ひろかの腕ってあんな細いんだな。腰だって…あれウエスト何センチだよ。細っ。
そんな事を考えていると、佐藤がこっちを向いて、着替えをジロジロ見るなんて変態!なんて言うから、見てねーし!と持っていたボールでシュートをした。
まぐれでしか入らない3ポイントシュート。
ガンッって音と共に弾き飛ばされるボール。
そしてその後に聞こえる佐藤の笑い声。
「っんだよ!」
俺が怒って佐藤を見ると、なぜか泣きそうな顔をしていた。
「男の子っていいね」
そう言って、佐藤はさっき弾き飛ばされたボールを取りに行った。