第61章 【烏野3年トリオ】卒業
「あぁー!やっぱここにいたっ!」
声がする方を見ると、そこには澤村、菅原、東峰が立っていた。
「もう帰ったかと思ったわ」
ホッとしたように澤村がそう言った。
「旭が早く渡さないからだぞ?」
「だってよ~。後輩たちの前じゃ恥ずかしいじゃんか~」
東峰がそう言ってカバンから何かを取り出した。
「佐藤、これ受け取ってくれますか?」
そこには学ランのボタンが3つ連なっていた。
「なにこれ・・・」
「えっと…俺たちの第二ボタンなんだ…けど」
私はそれを手に取り眺めた。
「ほら~、やっぱ引いてんじゃん~」
「だってよ~、他にあげる人いないし。ってか佐藤以外にあげたい人もいないしさ」
「男子から望まれてもいないのに、第二ボタン差し出すとかちょっとないよな」
「だな~」
3人がいつものようにそんなやり取りをしていた。
「・・・ありがとう。すっごく嬉しい!!」
私は制服のリボンを一度外して、紐部分に3つのボタンを通した。再度リボンを付けるとカチャンとボタン同士がぶつかって音を立てた。まるで3人が仲良く話をしている様に。
「3つももらって、私欲張りだね」
私がそう言うと、3人は一度目を見合わせた。
「整列っ!!」
澤村が号令をかける。
「3年間、ありがとうございましたっ!!」
そう言って3人は頭を下げた。
そして同時に顔をあげて、ニカっと笑った。
「・・・バカ」
私も勢いよく頭を下げた。
「3年間…ありが…と…ござい・・・」
下を向いたからなのか、私の目からは涙がどんどん溢れて、乾いた土を濡らしていった。
卒業式でも教室でも第二体育館でも泣かなかったのに、どうしてこんなに涙が出るんだろう。