第57章 【二口 堅治】Little Red Riding Hood
「佐藤!入ったぞ!」
さっき鎌先と一緒に入れた曲のイントロが流れてきた。
私はハッとして、手招きする鎌先の元へ向かった。
二人の持ちネタで振付をしながら歌い切り、その流れで私は鎌先の隣に座った。
ピロン
[ひろかさん、この後二人で抜けません?]
また二口くんからLINEが来る。
[抜けません!]
[あっ、初めて返事くれた]
ハッと顔を上げると、彼はニッて笑って小さく手招きをする。私は知らん顔で隣の鎌先を話を続けた。
私は鎌先と話をしながら、鎌先の肩越しの彼を見る。友人たちが次から次へと彼にアプローチをし、私は騙されちゃダメだぞって心の中で忠告する。
なのになぜ私は・・・
「ちょっと、お手洗い行ってくるね」
カバンを持ってトイレに向かう。
前髪を直して、カバンから化粧ポーチを取り出し、リップを塗り、少し崩れたメイクも整えた。そして私は部屋へ戻る。
そこにはやっぱり彼がいて、私の元へやってくる。
「ひろかさん、ちょっと来て?」
私は彼に腕を掴まれながら、空いていた部屋へ押し込まれた。そして、そのまま壁に押しやられ拘束される。
彼の顔をゆっくりと近づき、私はぎゅっと目を瞑った。
「あれ?抵抗しないの?」
彼の言葉にハッとして、抵抗しろと脳が神経に呼びかける暇もなく、彼は私の唇を奪った。