第57章 【二口 堅治】Little Red Riding Hood
「佐藤、遅かったな!」
部屋に戻ると鎌先が私を手招きしていた。
隣に座り、鎌先が操作しているデンモクに目をやった。
「お前さ、これとか歌える?俺結構好きなんだよな」
鎌先のリクエストを聞いていると、ポケットの中でスマホが振動した。
そっと画面と見ると、二口堅治という名前が表示されていた。
[ひろかさん、鎌先さんより俺の隣来ませんか?]
私は顔を上げて、彼の方を見た。
彼はニッと笑って、またスマホをいじり始めた。
[そんなに鎌先さんと一緒に居たら、俺嫉妬しちゃいますよ?さっき俺とキスしたの忘れちゃいました?]
私がまた彼の方を見ると、ニッと笑っている。
私はスマホの画面を下にして、ソファの上に置き、その後は一度もスマホを見ないようにした。
「俺便所~」
鎌先が部屋を出て行き、話す相手が居なくなった私は注文していたたこ焼きを口に運んだ。
「ひろかさん、俺にも下さいよっ」
さっきまで鎌先が座っていた私の左隣に二口くんが座っていた。
「・・・はい」
私がたこ焼きが乗ったお皿ごと差し出すと、ソファの背もたれに寄りかかりながら、口を開けていた。
早く~と全く自分から食べに来ようとしないので、私は雑に彼の口へたこ焼きを放り投げた。
「美味しいねっ?ひろかさん」
そう言って彼は、さわやかな笑顔で微笑んだ。
不覚にもその笑顔にドキッとしてしまったが、私は絶対に騙されない!そう心の中で断言した。