第57章 【二口 堅治】Little Red Riding Hood
「鎌先~、あれ歌おうよっ!」
鎌先とは中学の時から一緒にカラオケに行っていたから、お互いの好きなアーティストのジャンルも把握済みだし、二人で歌うデュエット曲のレパートリーもあった。
「二人いい感じじゃん!付き合っちゃえばいいのに~」
周りからの茶化しに照れながらも、鎌先は満更でもないような顔をしていた。
「私、お手洗い行ってきます」
私は部屋を出てトイレへ向かった。
用を済ませて、私は鏡の前で軽く前髪を整える。
「よしっ!」
トイレを出て部屋に向かう途中、見覚えのある子が壁によしかかっていた。
「二口くん?どうしたの?」
「ひろかさん、LINE交換しましょう!QRコードでいいッスか?」
彼の段取りの良さに、あれよあれよと言う間に連絡先の交換が終わってしまった。
「ねぇ、ひろかさんって鎌先さんの事好きなんスか~?」
彼はスマホの画面を見ながら口を開いた。
「えっ、いや・・・」
「違うんスか?じゃぁ、俺ひろかさん狙っていいっスか?」
そう言うと彼はいきなり私の頬にキスをした。
「ちょっ!!何すんのよ!」
「いいじゃないですか~、別に減るもんじゃないしっ!それとも口にしてほしかったんスか~?」
「ちっ、違うしっ!!」
彼のニヤリと笑った顔に私は背を向けた。
「じゃぁ、俺便所行きますんで~」
ヒラヒラと手を振りながら彼は去って行った。
「最悪…」
私はゴシゴシと袖で頬を拭いた。