第55章 【烏野高校排球部】三年生の事情
「佐藤先生、ちょっとよろしいですか?」
今度は教頭先生がお見えになった。
「どうかなさいましたか?」
「いや、さっきなんか叫び声が聞こえたような…」
「そっ、そうですか?あっ、さっきグラウンドで体育があったみたいですから、外からの声じゃありませんか?」
まだ疑っている教頭を見て、咄嗟に話を変えた。
「そう言えば、今日のネクタイ素敵ですね!」
「そうかい?分かるかい?」
良かった。一安心。
「・・・ハァ」
「佐藤先生お疲れですね?」
職員室に入った私に声をかけてきたのは武田先生だった。
「さっき、教頭に掴まっちゃって…」
「・・・あぁ」
それはお気の毒に。と彼は苦笑いした。
「武田先生?バレー部は、どうですか?」
今日の来室状況から、少しバレー部に興味を持った。
「みんなすごいですよ!!本当に!!是非、見学に来てください!!」
すごく目をキラキラさせて話す武田先生。
さっきの二人とは偉い違いだな。そう思いながら、私は保健室に戻った。
私はいつも早めの昼食を取る。
昼休み、保健室は一番忙しくなるからだ。
私がお弁当を開けた瞬間、ドアのノック音が聞こえた。
「今日も、お昼抜きかな?」
私は覚悟を決めて、「はい、どーぞ」と言った。
昼休みのチャイムが鳴ってからは一気に保健室が賑やかになる。
「ほら!用ない人は出ていきなさい!具合悪い子もいるのよ!」
昼休みに来る生徒はさまざまだ。
本当に具合の悪い子、昼休み外で遊んでいて擦りむいた子、寝不足でベッドを借りに来る子、ただ暇つぶしに来る子。いろんな生徒がいる。
私は一つ一つ対応して、あっという間に休み時間が終わる。
予鈴が私をホッとさせる。
「やっと、ご飯食べれそう…」
そう思って自分の席に座り、さっき食べれなかったお弁当を出す。
「いただきます…」
「せっ、せんせーーーい!!大変大変!!」
また、ご飯は食べられそうにないな。
「何?どうしたの?」
数人の生徒が一人の生徒に連れ添って保健室に来ていた。
その一人の生徒のこめかみからは血が流れ出ていた。
「さっき、俺が遊んでたら、その、血がっ」
「分かった。あなたたちは授業が始まるから教室に戻りなさい」
他の生徒達を教室に戻し、ケガした生徒を中に入れた。