第55章 【烏野高校排球部】三年生の事情
「ねぇ、ひろか先生…」
「んー?」
「俺さ、3年なのに何もしてないんだ」
「何もって?」
私は自分の席でコーヒー片手に話を聞く。
「大地は…主将は部の事本当に考えていて、しっかりしてて、叱らなきゃいけないとき、まとめなきゃいけないとき、ちゃんと3年生らしくしてる」
大地…あぁ、澤村くんのことね。
私はぺらっと手元にあった部活名簿を開いた。
「スガは、いつも後輩達のフォローをしてて。本当にあいつがいるから後輩達が成長してるんだってそう思う。スガもちゃんと3年生らしくしてる・・・」
彼は、はぁ。とため息をついた。
大きな身体だけど、猫背だからか少し小さく見えた。
「3年生らしく…かぁ。東峰くんも主将とかやりたいの?」
「いえいえいえいえ!!絶対無理!俺はいつも自分でいっぱいいっぱいで…。だから、周りのことにも目を配れる二人がすごくカッコ良くて、俺だけ全然ダメで…。たぶん二人は俺みたいにウジウジ悩んだりしてないんだろうな…」
焦ってあたふたした後、またシュンとする彼を見て私は笑った。
「でも俺に出来ることはエースとしての役割を精一杯果たすだけだから。それしか出来ないから…。あいつらに愛想つかされないようにしないと…」
彼はグッと残りのお茶を飲みほして、椅子から腰をあげた。
「先生、ご馳走様でした」
私は入口まで彼を見送る。
「また痛くなったら来なさい」
「はい!」
さっきまでの凹み顔から、なんだか少しスッキリした顔を見せる。
頑張れ、高校生!
「失礼します…」
さて。今日2人目の生徒がいらっしゃいましたよ。