第54章 【花巻 貴大】習慣
「佐藤!これやるよ!」
お昼休み、花巻くんが机の上にいちごミルクのジュースを置いた。ノートのお礼、と言って。
「いいのに、こんな…」
「いや、マジで助かった。最近インハイ前で練習きつくって帰ったら速攻寝ちゃうんだよな」
ハハハと笑って、私の席の前に座った。
そのまま、持っていたパンを頬張って部活の話を始めた。教室で男の子と二人でお昼を食べるなんて人生で初めてで、私は緊張しながらも、お弁当を口に運んだ。
でも全然味がしなかった。
「そのいちごミルク美味しい?」
食後、先ほど頂いたジュースにストローを刺し口を付ける。
いちごミルクは・・・とっても甘かった。
本当はいちごミルクはあまり好きではない。
けど、なぜか今日はとっても美味しく感じたんだ。
それからと言うもの、私はいつ花巻くんにノートを貸してと言われても恥ずかしくないように、花巻くんに貸す用ノートを作っているのだ。