第54章 【花巻 貴大】習慣
「佐藤、おはよう」
そして、あの日から花巻くんは私に声をかけてくれることが多くなった。
「今日は、課題やったの?」
「おう!ばっちり!」
そう言ってピースサインをする。
残念。そんな思いを押し殺して、私は笑って返した。
「佐藤、またいちごミルク?」
そして、あの日から私は毎日いちごミルクを買って飲んだ。
「いちごミルクってさ、女の子って感じだよな。可愛い」
花巻くんがそう言ってたから、私は好きでもないいちごミルクを買い、彼の居る前でわざとに飲んだ。
「佐藤、昨日の観た?」
そして、あの日から私は深夜に放送されているお笑い番組を必ずチェックした。
「観たよ、今回花巻くん一押しの芸人さん出てたよね」
少しでも花巻くんと会話が続くようにアンテナを張った。
「佐藤ってバレー好きなの?」
そして、あの日からバレーボールについて勉強もした。
「観るのは好きだよ。私運動音痴だから」
そう言って、昨日暗記した日本代表選手の名前を言ってみたりする。彼が食付いてくれるように。
毎日が楽しかった。
一つ、また一つ私の習慣が出来てくる。
その習慣が増えれば増えるほど、
すごくすごく楽しかった。