第53章 【月島 蛍】僕は君が嫌い。
「おぉーい、日向!あんまはしゃぐなよ~?」
休憩時間になり、日向が蛇口前で水遊びをしている。
菅原さんが呆れながらもほっておいていた。
「みなさーん、ドリンクですー」
さっきまで冷やしていたドリンクをかごいっぱいに詰め込んで体育館へ持ってきた彼女。
すごく嫌な予感がする。
ガシャン
「・・・本当、何やってんの」
見事にぶちまけた。
まぁ、蓋もちゃんとしているし、土の上に落としたわけじゃないからいいんだけど。
「すっ、すいません!ちょっと洗ってきます!」
「えっ、いいって!だいじょ・・・」
止める菅原さんの声も聞かず、彼女が駆け出した瞬間、騒ぎに驚いた日向がこっちを向いた。
「きゃっ!!」
蛇口を指で押さえつけ、勢いをつけた水を掛けて遊んでいたのだ。日向がこっちを向けば自然とこっちに水が飛んでくるわけで。
「わぁーーーー!ひろかごめん!!」
「あははー。大丈夫大丈夫」
「いや、全然大丈夫じゃないでしょ」
彼女は全身ずぶ濡れ。
部員たちは騒ぎに集まりだした。
「ひろか…ちょっ!その…!あれが…!!」
日向があたふたしていて、その理由はすぐに分かった。
バレー部のTシャツは白。
それが濡れ、彼女の身体にフィットしている。
もちろん下着が透けていた。
部員たちは見てはいけないと思いつつも、目線を離すことは出来ない。
「だっ、誰かタオル持って・・・」
澤村キャプテンが声をかける。
僕は自分の未使用のタオルとさっき脱いだトレーナーを持ち出す。
「本当、バカじゃないの」
僕は部員たちと彼女の間に入って、濡れた頭をくしゃくしゃと拭く。
きっと彼女は下着が透けていることなんて気づいていない。だから厄介だ。まぁ、今は僕が壁になっているから、みんなには見えないんだけど。
「ごめんねー。せっかく月島くんが髪結んでくれたのにー」
「そこじゃないからっ!」
彼女の頭には?マークが3つ。
こういう所も嫌いだ。