第53章 【月島 蛍】僕は君が嫌い。
キーンコーンカーンコーン
「ツッキー!お昼食べよっ!!」
山口がいつものように僕の席の前に座ってお弁当を広げる。
隣の席の彼女も自然と僕たちの輪に入る。
「ひろかちゃん、今日もおにぎり?」
「うん!おにぎり大好きー」
彼女の昼食はいつもおにぎり。
ただ、すごく気になることがある。
「ちょっと!汚いんですけど!!」
彼女のまわりには海苔がパラパラとこぼれている。
「今時、幼稚園児でもこんな汚くしないけど!」
そう。彼女はおにぎりの袋を上手に開けられない。
僕はこういうのが気になる。
今時のコンビニのおにぎりは進化していて、誰だってきれいに開けられるような創りになっているのに、なぜここまでぐちゃぐちゃに出来るのか。逆に天才なんじゃないかと思うほどだった。
自分の昼食時に不快な思いをしたくない。僕は彼女からおにぎりを奪い取り、きれいに袋を剥がしてから手渡す。
「わぁ、きれい。ありがとー」
嬉しそうにおにぎりを頬張る。
この年になって、コンビニのおにぎりを上手に食べられないなんて。
どうしようもない。
こういう女はもちろん嫌いだ。