第51章 【灰羽 リエーフ】コンプレックス
彼とは中2の夏から会っていない。
彼がお父さんの仕事の関係で引っ越してしまったから。
同じ都内だから会おうと思えば会えたんだけど、私は会いに行かなかった。別の恋をしようと、彼を忘れる努力をしたんだ。
今までの話を聞いて分かるとは思うが、コンプレックスを拗らせ、今だに新しい恋が出来ていない。
「ひろか!お願い!次の練習試合助っ人に来てくれない??」
「えぇ、また?」
「もう、今更ちょっと運動したくらいで背なんて伸びないってば!」
私は親友の部活の助っ人に呼ばれる事がある。
女子バレー部だ。
ただでさえ人数が少ないバレー部でけが人が出てしまい、私は次の日曜日練習試合に参加した。
「「ありがとうございました!!」」
試合後、相手チームと挨拶を済ませ、私は制服に着替えた。バレー部じゃないのでみんなとお揃いのジャージは持っていない。
他の学校っていうのはちょっと新鮮で興味が湧いた。
私は主将の正式バレー部への入部勧誘をスルーして、自分はここで失礼すると告げた。
「結構広いなぁー。セーラー可愛いしー」
私がキョロキョロ周りを見渡しながら歩いていると後ろから声がかかった。
「あれ?見かけない制服だな」
「なになに?」
「背高いッスね!スタイルいいッス!かっこいいッス!」
声のする方を見ると、赤いジャージの集団がいた。
その集団は私を囲んで、次から次へと質問をぶつけてくる。
どこの高校?何年?彼氏いるの?
質問に答える前に次の質問が来る。
背の小さい男の子が、お前らいい加減にしろって叱っている。
プリン頭の子は我関せずでスマホをいじっていて、坊主頭の子が私にごめんね、と笑いかけた。
「あっ!!こんな所にいたー!なんで置いて行くんスかー!!」
彼らの背後からもう一人男の子が走ってきた。
後から合流した彼は私が見てもとっても背が高くて驚いた。
先輩達にドヤされながら笑った顔がどこかで見覚えがある。
「おい、リエーフ!今日はレシーブ練からだからな!」
「えっ!?リエーフ!???」
私がリエーフの名に反応すると、彼がこっちを見た。
「・・・ひろか?ひろかじゃん!!何やってんだよ!!!」
まさかこんな所で会うとは。
せっかく忘れようとしていたのに。
神様はとっても意地悪だ。