第51章 【灰羽 リエーフ】コンプレックス
両親共に背が高くて、その遺伝子をしっかりと受け継いだ私は小学校からいつも一番背が高かった。
フォークダンス。男子の人数が足りなかったため、私はいつも男子役だった。
当時、異性と手が触れる機会なんてそうない。好きな彼と自然に手が繋げる絶好の機会に、私は彼の隣で次々と女の子と手を繋いでいた。
それでも、彼とはクラスの中でも仲がいい方だった。中学に上がって、塾のクラスも一緒だった。休み時間にはよく2人で話をしていた。
周りから付き合ってんの?と言われるくらい。
私は、付き合ってないし!!って照れ隠しで返すけど、彼は特に否定しなかった。
それが嬉しかった。
もしかしたら、彼も私と同じ気持ちなのかも。そんな期待もしていた。
「またお前ら一緒にいんのかよ!付き合っちゃえばいいじゃん」
お節介な先生が私達をからかった。
いつもは嫌だよ!とか言っちゃうんだけど、今日は笑って彼を見た。
「…ひろかかぁ。もう少し身長小さければ、俺はめっちゃタイプなんだけどな!」
まだ告白もしてないのにふられた。
しかも理由が身長。
それ以外はタイプだって所が余計に悔しかった。
小さい身長を伸ばすなら、牛乳飲んでスポーツして、高いヒールを履けば可能性は0じゃない。ただ、大きい身長を小さくするのは努力や工夫でどうにかなるものではないのだ。
私は彼好みの女の子になる努力すら出来ないのだ。
「そこまでタッパあって、運動神経もいいんだから運動部入れば大活躍だったじゃん!」
「運動部入ってまた背が伸びるの嫌だったんだもん」
「小さい子は確かに可愛いけど、背が高いとモデルみたいでカッコいいじゃん!」
「あのね、モデルは背が高いからってなれるもんじゃないの!それに、今の時代モデルさんも小さい子多いじゃん。唯一残された世界にも小さい子が進出しやがって…本当絶滅しろ!」
「あんた、言葉悪いよ」
よく言われた。
背が高くてカッコいいって。
違う。私が欲しかったのは可愛いなんだ。
私だって女の子だもん。可愛いって言われたかった。
「彼とはどうなの?」
「別に。もう諦めてるから。普通に友達だよ」
私はため息をついて、彼を想う。
「元気にしてるかな?リエーフ」