第51章 【灰羽 リエーフ】コンプレックス
「あぁ、腹が立つ。なんなんだ、あの悩殺行為」
私は休み時間が嫌いだ。
特に今日は機嫌が悪い。
何たって、今日の日直女子はクラスで一番身長の低い子だからだ。
彼女は一生懸命ジャンプをしながら、黒板の文字を消している。ジャンプするたびに揺れるスカート。
見えるか見えないかの所でジャンプをやめたりするから憎い。
あれは見えてはいけないのだ。見えそうで見えないからいいのだ。
彼女はそれを知っているのか?知っていてわざとにやっているんだろう?
はぁ。本当に腹が立つ。
私は席を離れ、黒板の所へ行く。
「貸して。消してあげるから」
私がそう言うと、それはまぁ可愛い顔で私を見上げて、ありがとう!と微笑むんだ。
「ひろかちゃん、背が高くて羨ましい!」
あぁ、出ました。
何が羨ましいだ。本当にこの身長になりたいのか?違うだろ?ふざけんなよ。ちっちゃい子から言われるこの言葉がどれだけ私達、高身長女子を傷つけているのか君は分かっていないだろう?
私が席に戻ると親友が呆れた顔で私を見た。
「何、また自分から傷つきに行ってんのさ」
「だって、あぁーいうのを見て男子が可愛いなーなんて言い出したり、手伝いだしたりしたら、それこそ傷つくよ」
「まだ引きずってんの?彼のこと…」
そうだ。
私がこんなにも身長を気にするのは、昔大好きだった彼のせいだった。