第50章 【澤村 大地】性癖
「ひろか、また澤村の事ばっか見てたでしょ?」
休み時間、親友の彼女が呆れた顔で私に言う。
「カッコイイよね、澤村」
「・・・まぁ。いい奴だよね」
そう。他の女子のこういう反応も好きだ。
周りにキャーキャー言われてる男よりよっぽどいい。
ごく普通の高校生感がたまらなくいい。
「澤村のどこが好きなの?真面目な所?」
また彼女がいい発言をする。
もちろん彼はしっかりしてるし、人をまとめるのが得意だ。けど、バカみたいに真面目な男の子ではない。
ほら、見てみよ。
休み時間は机の上に座っておしゃべりをする。
廊下だって走る。こないだは教頭に怒られていた。
お父さんみたいなんて言われているけど、結構少年っぽさは残っている。そこが可愛くていい。
「ねぇ、澤村~」
彼女が彼を呼ぶと、彼はんー?と返事してこっちに来た。
んー?って顔もお気に入りの一つだ。
「ひろかが用事あるって!」
彼女はちょっと意地悪な顔で私に話を振った。
「ん?佐藤が用事?どうかしたか?」
高校3年間ずっと同じクラスで、自分で言うのもなんだけど、他の子よりもずっと彼と仲が良い自覚はあった。
それでも、苗字呼びを辞めない感じがいい。
クラスで私の事を苗字で呼んでいるのは澤村とあまり話したこともない数人の男子くらい。
「・・・澤村がカッコイイな~って思って」
「はっ!?お前な~、そうやって人をからかうのもいい加減にしろよ?」
眉を下げて笑う彼。
私が3年間こんなにも熱い想いを持ち続けているのに、全く気が付くこともなく、自分がカッコイイと思われているはずないと思っている所がいい。
そのせいで私の恋心は未だに伝わってないんだけど。
「おぉーい、大地ー」
後ろから彼を呼ぶ声が聞こえる。
今行く!と返事をした後、私たちの方を見て、口を開く。
「お前ら、俺なんてからかってないで、次の授業の予習しといた方がいいんじゃないのか?今日この列当てられる番だろ?」
「やばい!!私訳してない!!」
焦る彼女に、俺をからかった罰だ。と笑って去って行った。誰とでも隔てなく話はするけど、基本男友達といる。
別に女の子に興味がないわけではない。こないだ、グラビアの女の子で誰が好きかって話にも楽しそうに参加していた。
男といる方が気が楽だしな。的な考え方も嫌いじゃない。