第49章 【山口 忠】For the first time.
「・・・あっ」
休日、街に出た俺の目に映ったのは、ひろかちゃんと観ようとして観れなかった映画の続編のポスターだった。
もう、続編か・・・。
そう言えば冬も終わって、すっかり暖かくなっていた。
“ねぇ、ひろかちゃん・・・この映画”
「この映画、私と一緒に観てくれませんか?」
声をかけられた方を見ると、そこにはずっと会いたかった人が立っていた。
「・・・久しぶり」
「ひろか・・・ちゃん」
俺たちはその後、すぐに開演となる映画を観た。
「やっぱ、1作目観てないと微妙だね」
「ふふふ、そうだね」
「「・・・・・・・」」
沈黙の中、俺たちはどこへ行くこともなく歩いた。
久しぶりに会ったひろかちゃんはバッサリ髪を切っていた。ロングも可愛かったけど、ボブもすごく可愛かった。
あれから、どうしてた?
聞きたかったけど、聞けなかった。
「山口くんは…最近どう?」
急にひろかちゃんが口を開くから、俺はビクッと肩を揺らした。
「さっ、最近?そうだね、うん。ボチボチだよ」
「そっか・・・」
全然ボチボチなんかじゃない。
けど、そんな事カッコ悪くて言えなかった。
「ひろかちゃん・・・は?」
俺がそう聞くと、彼女は立ち止まって俯いた。
「好きな人が、好きな人がいるんだけど、その人をすごく傷つけて、それでもその人に会いたくて、でもどんな顔で会ったらいいか分からなくて」
俺はゆっくりひろかちゃんに近づいた。
彼女は小さく震えていた。
「ずっと会いたかったんだけど、もう私のことなんて好きじゃないかもって思ったら怖くて連絡出来なかった」
「うん」
「でも、今日会って、やっぱり好きって思って・・・」
「・・・うん」
「山口くん・・・もう遅い?もう、私のこと・・・」
俺は泣いているひろかちゃんをぎゅっと抱きしめた。
「待つって言ったじゃん、俺」
「ごめんなさい。ごめ・・・」
「もう、謝らないで。泣かないで?今日は俺たちの付き合った記念日だから。笑ってよ?」
彼女がまた泣き出すから、俺も一緒に泣いた。