第49章 【山口 忠】For the first time.
「ごめん、ツッキー。いきなり押しかけて」
俺はツッキーの部屋へ通され、床に座った。
「今日デートじゃなかったわけ?」
何も答えない俺にツッキーはため息をついた。
しばらく沈黙が続いて、俺は体育座りで俯いたまま口を開いた。
「ひろかちゃんとさよならしてきた。
まだ元彼が忘れられないみたい。ひろかちゃんが本当に好きなのはどっちなのか、答えが出るまで会わないって言ってきた」
「・・・へぇ」
ツッキーから返って来たのはそれだけだった。分かってた。こんな話されても困るだけなのは。それでも、誰かの傍にいたかった。
「カッコ悪い…よね。自分で会わないって言ったのに、今元彼と会ってるのかなとか、やっぱりより戻しちゃうのかなとか、もう・・・一生会えないのか…なとか」
流れ落ちる涙で、一張羅のズボンに滲んだ跡がつく。
ツッキーは何も言わずに部屋を出た。
俺は両腕で自分の膝を抱え込み、グスンと鼻をすすった。