第6章 【東峰 旭】へなちょこの恋
「旭。お前、ひろかとどうなってんの?」
スガが俺に問いただす。
「どうなってるもなにも…元々付き合ってたわけじゃないし。
それに俺といたら佐藤さんに迷惑がかかるし。
佐藤さんには奥下みたいなやつがお似合いって言うか…」
「ほーんと、お前はへなちょこだな」
スガの向こう隣りにいた大地がいつものように俺に呆れていた。
「なんスか?何の話ッスかー?」
西谷が面白そう!と話に入ってくる。
止めに入る俺を大地が抑え込み、スガがすべてを西谷に話した。
「なーんスか!そんな事ッスか!」
そんな事って…。
「いや、別に付き合っていたわけじゃ…」
「でも旭さんは好きなんスよね?その人のこと」
純粋な顔で問われてしまうと俺も素直に答えてしまう。
「…好きかな。ずっと、好きだった」
一気に顔が熱くなる。
「あーさひ!今ひろかにメールしたら、生徒会室にいるってよ」
「頑張れよ、へなちょこ」
俺の肩を大地がポンと叩いた。
俺はすぐに生徒会室へ向かった。
あがった息を整えて、ドアノブに手をかけた時、
中からドアが開いた。
「・・・何?」
奥下が生徒会室から出てきた。
俺の顔を見るなり、少し嫌そうな顔をしているのがわかる。
「…中にいるけど?」
佐藤さんに会いに来たんだと察した奥下は
人差し指で生徒会室を指差し、その場を離れようとした。
「あっ!あのさ!」
「ん?」
「奥下はその…佐藤さんの事がす…」
「好きだよ?」
堂々と自分の気持ちを言える奥下がとてもかっこよく見えた。
奥下は外見だけじゃなくて、中身も本当にかっこいい男なのだと思った。
それに比べて俺は…。
自分が情けなくて俯いた俺に奥下は言った。
「もう、何回もフラれてるよ。好きな奴がいるんだって。
毎日昼休みになると俺には見せたことない笑顔でそいつのとこ行くんだよね」
「それって…」
ふっ、と悲しそうに笑って続けた。
「お前さ、そんなんだと他の奴に取られるぞ?
俺だってまだあきらめてないから。
同じ大学行ったらお前なんかよりずっと長く一緒にいることになるんだから、
心変わりしたっておかしくないしな!」
奥下は背中越しに手を振って帰ってしまった。