第6章 【東峰 旭】へなちょこの恋
「東峰くん」
いつものように昼休みになると佐藤さんがやってきた。
「東峰くん、しばらく一緒に昼食べるのやめ…」
俺は、佐藤さんの言葉を遮って口を開いた。
「俺もさ、ほら、なんか進学クラスの人と一緒にいると、
ちょっと息苦しいっていうか。変に噂とかもされちゃうし。
馬鹿な俺と一緒にいるより、
佐藤さんは奥下みたいな頭のいい奴と一緒にいた方がいいと思うんだ」
本当はそんなこと思っていない。
息苦しさなんて一度も感じたことない。
むしろ、居心地の良さまで感じていた。
けど…
「…そっか。なんかごめんね。迷惑だったよね」
今までに見たことの無い悲しそうな笑顔で俺に言った。
それじゃ。そう言って佐藤さんは走り去ってしまった。
それからは極力佐藤さんに会わないように、避けるように学校生活を送っていた。
「東峰~、佐藤さんにフラれたわけ~?」
「やっぱり、東峰より奥下くんだよね~」
クラスの女子たちが勝手なことを言ってくる。
俺はただ聞こえないふりをする。
昼休み。
クラスの女子たちがうるさくて、俺はこっそり図書室へ向かった。
ここなら就職クラスの奴らはいないだろう。
俺は端の席へ向かった。
っ!!
窓の隙間から吹く風に長い髪を揺らし、
乱れた髪を整えるように、その髪を耳にかける。
そこには佐藤さんの姿があった。
すごくきれいだ。
「ひろか!ここにいたのか。」
昼休み、佐藤さんの隣にいるのは俺じゃなくて奥下だった。