第6章 【東峰 旭】へなちょこの恋
ガチャ
生徒会室には佐藤さんが1人窓の外を見ていた。
「あっ…菅原くんだ。バレー部終わったみたいだね。さっきのメールなんだったんだろう」
佐藤さんは相手が俺ではなく奥下だと勘違いをしているのだろう。
振り向かずに話続けていた。
「私も運動部入ればよかったなぁ~。生徒会も楽しかったけどね。
…男子バレー部のマネージャーとか…。
そしたら、東峰くんとももっと仲良くなれたのかな…。なーんてね」
ガタン
俺は佐藤さんの背中をぐっと抱きしめた。
「えっ…あっ、東峰くん!?どうしてここに…」
びっくりしている佐藤さんを更に強く抱きしめた。
佐藤さんの両手が、俺の腕にそっとかぶさる。
「東峰くん…苦しいよ…」
「ごめん…」
それから俺たちはお互いの気持ちを確かめ合った。
生徒会室を出て、戸締りをして、薄暗い校内を手を繋ぎながら歩いた。
「成績が落ちたことを東峰くんのせいにされたくなくて
必死で勉強してね、…じゃーん!AO入学試験突破しました!」
あの日、佐藤さんはしばらくお昼休みも勉強に専念して、
AO入試に挑むことを伝えに来たのだと言う。
「ごめん、俺勘違いして…ひどい事…」
もういいよ。と笑い繋いでいた手を離し、俺の腕に手を回した。
「東峰くんの腕好き。男の人って感じ」
「ハハ…佐藤さんは女の子って感じ。全部が小さくて壊しちゃいそう…」
ふと外を見ると月がすごくきれいに出ていた。
嬉しそうに空を見上げる佐藤さんがすごく愛おしく感じた。
「きれいだ…」
「そうだね」
「いや、その…佐藤さんがだよ…」
何言ってるの。と恥ずかしそうにうつむく彼女を抱き寄せた。
「俺、こんなんだけど佐藤さんに見合う男になるから」
ぎゅっと力強く抱きしめた。
苦しいよ…と俺の腕の中で笑う彼女がゆっくり顔をあげた。
俺は彼女の頬を手で包み込んだ。
心臓が飛び出そうで、この音が聞こえてしまうのではないかと心配になるくらいだ。
「…壊さないでね?」
「きっ…気を付けます」
俺たちはゆっくりと唇を重ね合わせた。
The End