第47章 【黒尾 鉄朗】ヒーロー ~You're my hero~
「・・・クロ、どうしたの?こんな時間に」
今、ひろかのピンチに傍にいるのは澤村。
俺は自分の存在意義を失った気がした。
気づいたら研磨の部屋に来ていて、
何も言わない俺に、研磨は座ったら?とベッドを譲ってくれた。
「クロ・・・泣いてるの?」
研磨がオドオドしながら、俺の隣に腰かけた。
「・・・えっと、頭くしゃってしてもいいよ?」
どんな励まし方だよ。俺はハハ、と笑って俯いたまま、研磨の頭をくしゃっとした。
研磨は手を振り払うことなく、黙って俺に頭を撫でられていた。
「クロはさ・・・いつも俺と一緒にいてくれた。嬉しかった。だから、今はおれが一緒にいるから・・・」
研磨がそんなことを言うから、また涙が止まらなくなる。
「クロはヒーローだから。昔も今も、俺とひろかのヒーローだから・・・」
いつも無口な研磨が一生懸命俺を励ます。
「研磨、ありがとうな」
「・・・えっ、あ、うん」
その後、親父さんから連絡があり、俺は研磨の部屋を出た。自分の家に着く頃に、澤村から着信があった。
「なんか、悔しいな。ひろかが俺よりお前に助け求めたなんて」
「距離が近いからだろ。それに、黒尾はヒーローらしいからな。こないだ、黒尾の勇姿を聞かされた身にもなってくれ」
少し寂しそうに澤村は言った。澤村は俺の気持ちにも気づいて気を使って言っているんだろう。
「いいよな、幼馴染って。何でも通じ合ってるって感じがするよ」
「バカ言え!お前なんて簡単に名前呼びさせやがって!こっちはいまだにあだ名だ!」
「そんな事かよ!それよりも絆とかだろ!昔からひろかと一緒にいたくせに何言ってんだ!」
「俺は十数年かけてヒーローになったんだ!1年やそこらで自分と同じ土俵に立たれた俺の身にもなれ!!」
俺たちは無駄な言い争いをし、疲れた所で笑い合った。
「澤村はどこの大学行くんだ?」
「N大だけど?」
「そんなにひろかが好きなのかよ!」
「それはたまたまだ!!」
また笑い合って、澤村は大きく息を吐いた。
「4月からは正々堂々と戦わせてもらうぞ、ヒーロー?」
「望むところだ、ブラック!」
「ブラックって戦隊物のこと言ってたのか?」
「そうそう。俺はレッド!」
「仲間割れじゃねーかよ」
俺たちはまた笑い合った。