第46章 【黒尾 鉄朗】ヒーロー ~試練~
近くにあったスーパーで買い物かごをカートに乗せた。
「今日、海くんのご両親いないんでしょ?」
「あぁ、親戚の結婚式だってよ」
俺たちはピザを頼む予定だったが、たぶん足りないと言い出すだろうと予想して、ひろかに夕食のリクエストをした。
「シチュー食いてぇな、久しぶりに」
俺たちはシチューの材料とお菓子やジュースをカゴに入れ、会計している間に、ひろかは自分の買い物をしていた。
「ねぇ、クロ覚えてる?昔も二人でスーパー行ったこと」
帰り道、いきなりひろかが口を開いた。
「初めてシチューに挑戦しようと思った時に、失敗して焦がしちゃってさ!」
「お前がビービー泣くから、もう一回買い出し行ったんだよな」
俺たちは二人で笑い合った。
「私がいつまでも泣いてるから、クロが手繋いでくれたんだよね」
そうだったか?と俺は覚えてないフリをした。
「クロはいつも私がピンチの時、助けてくれたよね」
ふふふ、と笑って俺を見上げるひろかをすぐに抱きしめたいと思ったが、両手に持った荷物のおかげで、俺の理性は保たれた。
「私、もう泣かない!頑張って勉強して、こっちの大学受かるから!」
「昨日はビービー泣いてたくせにな!」
「うるさいなー!」
ふくれっ面でそっぽを向いたひろか。
俺は左手に持っていた荷物を右手の荷物と一緒に持ち、空いた左手をひろかに差し出した。
「また泣かれたら困るから、手繋いでやるよ」
ひろかは文句を言いながらも、俺の手の中に小さな手を収めた。