第46章 【黒尾 鉄朗】ヒーロー ~試練~
「またな。ひろか」
「・・・うん!」
俺は東京駅まで見送りに来ていた。
「なんだ?また泣くのか?」
「・・・泣かないもん!」
不貞腐れるひろかをギュッと抱きしめた。
「大学合格したらしたいこと考えとけよ?」
「なんでもいいの!?」
「・・・あぁ、約束な」
やったぁーと俺の腕の中で喜んでいるひろかを俺はまた強く抱きしめた。どんなに抱きしめても、俺の中のもどかしい気持ちは消えることなく、またひろかは俺の元からいなくなってしまった。
いつも傍にいた。
きっとこれからもずっと俺たちは一緒にいるんだ。
たった1年離れるだけ。
これは何かの試練なのかもしれない。
ひろかと一緒の登校時間も、
何気ない昼休みも、
休日に研磨の家で何をすることもなく過ごした日々も。
今ひろかと離れてやっと幸せだったんだと気づいた。
ひろかの居ない世界を知ることで、これからひろかとの時間を大切にしたいと思えるようになった。
だから、この試練を耐え抜こう。そう思った。
「・・・クロ」
ひろかを見送って駅を出ようとした時、後ろから研磨の声が聞こえた。
「研磨!?・・・どうした?」
「・・・いや。その・・・クロを迎えに来た」
俺は笑って、研磨の頭をくしゃっとした。
研磨はやめてよって手を払う。
研磨は気を使って見送りには来ないで、俺が落ち込んでないか心配して迎えに来たのだ。
別に俺の気持ちを研磨に言ったことはないけど、研磨は気づいて、あえて何も言わないでくれていた。
「幼馴染っていいな」
俺が研磨に笑いかけると、研磨が眉間にしわを寄せた。
「・・・クロ、気持ち悪い」
俺はまた笑って、研磨の頭をくしゃっとした。