第6章 【東峰 旭】へなちょこの恋
まさかと思ったけど、次の日も佐藤さんは
お昼になると俺を迎えに来てくれた。
「そろそろテストか~」
テスト期間が近づいていて、俺は大きなため息をついた。
「私でわかる所があったら教えるよ?」
昼休み。佐藤さんの手作り弁当を食べながら、
隣で勉強を見てもらう。
まさかこんな幸せなことになるなんて予想もしてなかった。
学年でも俺たちの噂は広がっていた。
それもそうだろう。3年間誰も佐藤さんと付き合えた男はいない。
もしかしたら、俺の事…そう勘違いしてしまいそうになる。
俺は完全に浮かれていた。
「テスト返すぞ~」
えぇーー。と教室中からブーイング。
けど、俺だけは妙に顔がニヤけてしまう。
「東峰。頑張ったな」
返却されてテストの点数は過去最高の点数だった。
「東峰~、すげぇな」
「いや、佐藤さんに教えてもらってたから」
俺はテストの点数というよりも、
佐藤さんに教えてもらえる事に優越感を感じていた。
「まさか、佐藤さんと付き合ってんのか?」
「いや…」
「そうだよな~!学年トップクラスの佐藤さんが俺たちみたいな就職組なんか相手にしないよな~」
浮かれていた俺を一気に叩き落とす一言。
「そういえば、佐藤さんなんか調子悪かったの?
順位めっちゃ落としてたけど…」
嫌な胸騒ぎを感じながら、廊下に貼ってあるテストの順位表を見に行った。
そこにはいつも上の方にある佐藤さんの名前が15位くらいにまで下がっていた。
「失礼します」
職員室に日誌を提出に行くと、学年指導の先生と佐藤さんがいた。
「佐藤。最近たるんでるんじゃないか?
この大切な時期に成績を落としたら、希望の大学に行けなくなるぞ」
「それになんだ。最近就職クラスの奴といるみたいじゃないか。成績が落ちたのもそのせいか?
あれだ。お前は奥下みたいなやつと一緒にだな…」
これ以上は聞いていられなかった。
多分先生の言うことは正しい。
普段は空き時間に奥下と勉強しあって、
レベルの高い問題に取り掛かっていたのに
今回は俺に教えるためにレベルを下げて勉強していたのだから。