第46章 【黒尾 鉄朗】ヒーロー ~試練~
合宿最終日、俺はひろかを呼び出した。
ひろかが宮城に戻りたくないって泣き出して、俺はただひろかを抱きしめるしかなかった。
“ひろかは甘えん坊の泣き虫だから、クロくんが守ってあげてね”
“俺が守ってやるから心配するな!”
俺は今、あの約束を守れていない。
毎日どんなに電話をしても、傍に居てやれない。
あいつの泣き場を作ってやれない。
「おばさん…ごめん。力不足だ…」
自分の不甲斐なさに、胸が締め付けられる。
ガサっ
「澤村!?」
ひろかをなだめて部屋に戻した後、澤村が俺の前に現れた。澤村の表情から、さっきの俺たちのやり取りを見ていたと分かった。
まだ、出会って間もないけど澤村のことは尊敬していた。
俺に持っていないものをたくさん持っていた。
戦隊物のヒーローだって、レッドだけじゃない。
ブルーやブラック、イエロー、ピンクがいる。
俺で力不足なら、仲間に頼ってもいいよな、おばさん。
俺は澤村にひろかの事を話して、向こうで支えてやってくれと頼んだ。澤村は俺の代わりが務まるか?と心配していたけど、俺は澤村なら大丈夫だと伝えた。
「澤村は…そうだな、ブラックだな」
澤村は、ジャージの色か?と困惑していた。
俺はそんな澤村を置いて部屋へ戻った。
「・・・本当はスーパーマンみたいに一人で守ってやりたかったんだけどよ」
俺は下唇を噛みしめた。