第46章 【黒尾 鉄朗】ヒーロー ~試練~
3年になり、1年にも面白い奴らが入ってきた。
俺にとっては最後の年。
今年こそは…!そう思っていた。
「宮城に遠征!?」
昔から聞いていたゴミ捨て場の決戦。
烏野高校との練習試合が決まった。
ひろかにゴールデンウイークの予定を聞いたら、バタバタしてそうだったので、宮城に行くことは黙っておいた。近くにいるのに会えないと絶対に悲しむから。
烏野はすごく面白いチームだった。
俺たちはまた対戦することを約束して宮城を後にした。
「今日ね、前にパンくれた子と友達になった」
ひろかが初めて新しい学校での出来事を口にした。
少しずつだけど、いつものひろからしくなってきていた。
「良かったな!なぁ、そっちの学校には俺くらいのイケメンいるか?」
そうふざけたら、ひろかはアハハと笑った。
夏休み前、恒例の夏合宿の詳細が出た。
俺はひろかに連絡を取った。
親父さんの承諾も得て、夏合宿にひろかも参加することになった。
新幹線の関係で1日目の夜に到着した。
久しぶりに会ったひろかが相変わらずだった。
「あれ?佐藤さん?なんでここにいるの?」
澤村達が不思議そうに俺たちを見た。
まさか、ひろかの転入先が烏野だったなんて。
そう言えば学校名聞いてなかったな。
次の日からひろかがベンチ横にいた。
ひろかがいるコートは活気が違う。
単純かもしれないけど、俺たちは一気にテンションが上がった。
俺のプレイ一つ一つに喜ぶひろか。
バレーで強くなるって約束、俺はちゃんと守れているか?
「黒尾、佐藤ってあぁいうキャラなのか?」
澤村が俺に声をかけてきた。
よくよく話を聞くと、“パンをくれた友達”が澤村だった。
そんな偶然あるもんかと、少し笑ってしまう。
俺は澤村に、ひろかの向こうでの様子を聞いた。
澤村だけには話しはするみたいだけど、やっぱり他のクラスメイトとは距離を取っているようだった。