第46章 【黒尾 鉄朗】ヒーロー ~試練~
「黒尾?黒尾ってば!!」
「・・・あっ、悪い。なんだ?」
ひろかが引っ越してから数日間、俺は心に大きな穴が開いたような、喪失感に襲われた。
「・・・クロ、最近ずっと変。ひろかがいなくなってから・・・」
研磨の言葉に部員たちが少し俯いた。
ひろかがいなくなって寂しいのは俺だけじゃなかった。
「ばか、ちげぇーよ。最近、金髪美女のDVD観過ぎて寝不足なんだよ!おい、山本!今度貸してやろうか?」
俺はふざけてそう返した。
だめだ。
俺はひろかと約束したんだ。
バレーで強くなるって。
「よし、アップ始めんぞ!!」
それからはきちんと部活に打ち込んだ。
「もしもし?クロ?部活お疲れ様!」
俺は毎日のようにひろかと電話やメールをした。
今日の出来事を話すと、ひろかはうんうんと聞いていた。でも、俺がひろかの事を聞くと、一気に大人しくなる。
「私の居場所はここじゃないもん」
明らかにいつものひろかと違っていた。
辛そうな声を出していた。
「…ねぇ、クロ。私の居場所はそこにまだあるよね?」
「あるに決まってんだろ?」
そう答えると、よかった。と安心したように言った。
きっと新しい環境に自分の居場所を作ってしまうと、こっちでの居場所がなくなってしまうと思っているんだ。
そんなことはない。
けど、電話でどんなに想いを伝えても、伝わりきらないんだ。
好きな奴が辛い時、傍に居てあげられないもどかしさに俺は唇を噛みしめた。