第45章 【黒尾 鉄朗】ヒーロー ~約束~
ひろかとの出会いは、いつだっただろうか。
幼い頃、近所の研磨の家によく遊びに行っていた。
初めは研磨と二人で遊んでいたが、ある日を境に研磨の家に女の子が1人増えたんだ。
当時は、「研磨、姉ちゃん生まれたのか?」なんて意味の分からないことを言っていた。
「お前、なんでいっつも研磨んちにいんだよ!」
「・・・ママが入院してるから」
物心ついた時から、すでにひろかのおばさんは入院していた。俺がおばさんと会ったのはほんの数回程度。
おそらく一時的に退院していたんだと思う。
「あら。あなたがクロくん?」
初めて会ったひろかのおばさんはとても美人でどこか儚げで、マセガキと言われるかもしれないけど、俺は一目惚れをした。
「ママ~」
おばさんに甘えるひろかを見て、ちょっと嫉妬するくらいだった。
「おばさん!ひろか、すーぐ泣くんだぜ!」
俺が告げ口をすると、おばさんは優しく微笑んで俺の頭を撫でた。
「ひろかは甘えん坊の泣き虫だから、クロくんが守ってあげてね?」
「・・・いっつもそうしてるし!」
嘘。本当は泣かせてるのは俺だった。
「クロくんは、ひろかのヒーローだね」
俺はおばさんにそう言われて、当時流行っていた戦隊物のヒーローのモノマネをして見せた。
「クロ、カッコイイ!!」
ひろかが目をキラキラさせて言うから俺はいい気になって、「俺が守ってやるから心配するな!」と約束を交わしたんだ。
俺は研磨とひろかを連れて、いつも空地でバレーをした。
研磨がトスを上げ、俺がスパイクを打つ。ひろかがレシーブをする。初めはボールに怖がっていたひろかもあっという間に上達した。
おそらく元々運動神経はいい方なんだと思う。
中学に入り、俺はバレー部に入部した。
「ひろかも入るだろ?」
そう言った俺にひろかは笑って答えた。
「私は部活やらない!家の事するんだ!少しでもお父さんの負担を減らしたいから」
ごめん、と謝る俺にひろかはまた笑って言う。
「なんでクロが謝るの?その代り応援行くから絶対負けないでね?」
「任せろ!」
俺はひろかとバレーで強くなると約束を交わした。