第6章 【東峰 旭】へなちょこの恋
「「おつかれっしたー」」
部活も終わり、俺は部室で着替えをしていた。
「なぁ、スガ。その…佐藤さんってさ、奥下と付き合ってるのか?」
俺は何か変なことを聞いたのか、
部室が一気にシーンと静まり返った。
「えっ、いや!そのクラスの女子がさ、聞いて来いって言うからさ!」
俺が焦っているのを見てスガが笑った。
「なーに焦ってんだよ。ひろかかぁ…。旭がねぇ~」
「だから、違うって!!」
それからしばらく、スガや大地にからかわれ続けた。
スガが言うには、佐藤さんと奥下は同じ大学を目指していて、
お互いに勉強でわからない所を教え合っているそうだ。
学年の人気者の2人が付き合っていても不思議ではない。
少なくとも俺なんかよりはずっとお似合いだった。
「おーい!東峰!飯食おーぜ!」
「あれ?今日飯なし?」
次の日、いつものように友人達が集まってきた。
「あっ、買いに行くの忘れてた」
俺が席を立ったその時、クラスの男子達のざわつく声が聞こえた。
「…佐藤さん!?」
教室のドアには佐藤さんが立っていた。
「東峰くん、お昼買っちゃった?」
「いや、これからだけど…」
「じゃぁ…一緒に食べよう?」
そういって二つのお弁当箱を顔の前に出して笑っていた。
なぜ佐藤さんが俺の分のお弁当を作ってきてくれたのか、
全然理解出来なかったけど、中庭のベンチで今二人で弁当を食べていることは事実だった。
今まで話せなかった事、たくさん話した。
すごく楽しくて、この時間がずっと続けばいいと思った。
けど、楽しい時間はあっという間に過ぎるもので…。
「あっ、予鈴。そろそろ行こっか」
もう少し一緒にいたい。そういう気持ちを押し殺して
彼女と一緒に教室へ戻った。
俺の教室の前に着き、佐藤さんはヒラヒラと胸の前で手を振った。
「また、明日ね!」
そう言って自分の教室へ戻って行った。
また明日…。明日も一緒にお昼食べるってこと…?
まっ、まさかな…。
佐藤さんの何気ない言葉に振り回されている自分が情けないと
うつむきながら教室の中に入った。
そのあと、クラス中から二人の関係について質問攻めにあった。