第44章 【澤村 大地】ヒーロー ~スタートライン~
澤村side
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「大地、おめでとう!」
家族に合格を祝ってもらっていた。
「でも、大地がここからいなくなっちゃうのは寂しいわね」
母親がそんな事を言うから、俺まで泣きそうになる。
ピピピピピ
「もしもし?・・・ひろか?」
ひろかからの着信があった。
通話中になっているのに声がしない。
「・・ひっく・・・大地・・・」
「どうした?何があった?」
「大地・・・私やっぱり東京行かない。ここに残る・・・」
あんなにも行きたがっていた大学の合格が決まった日に言うセリフではない。
「今どこだ?そっち行くから」
俺は今いる場所を聞いて家を出た。
「ひろか!!」
俺はひろかを見つけて、すぐに抱きしめた。
「・・・大地・・・助けて」
「大丈夫だ。まずは落ち着け。な?」
俺はひろかが泣き止むまでずっと背中を擦った。
「お父さんが泣いたの。ママが死んだ日だって泣かなかったのに。私最低だ。自分のことしか考えてなかった」
少し落ち着いたひろかはゆっくり話し始めた。
「私お父さんを置いて行けないよ・・・」
またポロポロと涙を流す。
「ひろか、行こう?」
俺はひろかの手を握ってひろかの家へ向かった。
「ひろか!!!!」
心配して探し回っていたであろうお父さんとバッタリ家の前で出くわした。
「ひろか・・・ごめんな」
ひろかのお父さんはぎゅっと彼女を抱きしめた。
そして、冷え切ったひろかを心配して家の中に居れた。
「・・・もしかして、大地くんかい?よかったら、大地くんも一緒に聞いてくれないか?」
俺はコクンと頷き、招かれるように家の中に入った。