第6章 【東峰 旭】へなちょこの恋
「おい、ひろか!ここにいたのかよ」
再び教室のドアに視線が集まる。
そこにいたのは佐藤さんと同じクラスの男子。
女子達の黄色い声が飛び交った。
彼は元生徒会長の奥下だったかな。
成績優秀、スポーツ万能、ルックスもすごく美形。
どこかのマンガから出てきたようなやつだった。
「後輩達が会計が合わないって泣きついてきてるぞ?」
先日、3年から2年へ生徒会の引き渡しがあり、恐らくてんやわんやな状態なのだろう。
その言葉を聞いて、佐藤さんはすぐに立ち上がった。
「えっと、こっちは…うん!OK。
ついでに提出してくるから、君はご飯食べて?」
お昼抜きをまぬがれた友人は
ありがとー!と佐藤さんの手を握った。
ふふ。と笑いながら、俺の方に視線を向ける。
「食べかけだけど、余ったの食べていいから!お弁当だけじゃ足りないでしょ?」
そう言って、奥下と共に教室を後にした。
「ねぇーねぇー、東峰!佐藤さんと知り合いなの?
ってか、佐藤さんってやっぱり奥下くんと付き合ってるのかなー??」
クラスの女子達が一斉に俺に質問を投げかけた。
知らない。だって、佐藤さんとはそんなに親しくないし。