第43章 【澤村 大地】ヒーロー ~最後の文化祭~
2歳の頃に東京に引っ越して、その頃からお母さんが入退院を繰り返したこと。
小さい頃はいつも従兄妹の孤爪くんの家にいたこと。
黒尾とも小さい頃からずっと一緒だったこと。
バレーもやっていたこと。
中学に上がる頃には家の事をやるためにバレーを辞めたこと。
高校2年の時、お母さんが亡くなったこと。
大体の内容は黒尾から聞いていたけど、俺は初めて聞く事かのような反応をした。
「小さい頃はただ、寂しい気持ちをお父さんにぶつけられたけど、少しずつそれが出来なくなって。研磨にも言えなかった。万が一、叔母さんに伝わってお父さんやママ…お母さんに知られたらと思うと言えなかった」
「別に呼び方ママのままでいいぞ?」
俺がそう言うと、ふふふ。と笑って、小さい頃から離れてたから呼び方変えるタイミング逃したんだと言っていた。
「私が泣きたいときに傍にいてくれたのはいつもクロだったんだ」
初めてひろかから黒尾たちの話が出た。
転入当初は東京時代の話には触れるなと言わんばかりのオーラを出していたのに。
「黒尾はひろかにとってどんな存在なんだ?」
俺は一度手を止めて、一番怖い質問をした。
「クロはね・・・私の、ヒーロー…かな?」
「ヒーロー?」
ひろかはうん。と言って机に伏せていた体を起こした。
「はぁ、今日はなんだか疲れちゃったな」
大きく伸びをして、ずり落ちた学ランを慌てて拾った。
「大地、ありがとう」
そう言って学ランを俺に手渡した。
ひろかにとって黒尾はヒーローか。
じゃぁ、俺はなんなんだ?
ひろかのヒーローにはなれてないか?
俺は黒尾と同じ土俵に立っているのか?