第43章 【澤村 大地】ヒーロー ~最後の文化祭~
澤村side
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今日、ひろかが教室で素の自分を出してしまい、一気にクラスメイト達と打ち解けた。クラス中がずっとひろかと仲良くなりたいと思っていたのだ。
本人は戸惑っていたけど、俺は少し安心した。
それと同時に少し寂しく感じたのは気づかないことにする。
「大地、今日も図書館寄る?」
俺たちは実行委員の仕事を終えて、教室から図書館へ移動した。
キリのいい所でふと、ひろかを見ると眠ってしまっていた。俺は自分の学ランをそっと肩には掛けた。
今日、かなり人に囲まれて気疲れしたんだろうな。俺はひろかの寝顔を頬杖付きながら観察した。
無防備な寝顔はすごく可愛くて、
色素が薄く細い髪の毛。華奢な身体のはずなのに、柔らかいフォルム。
ひろかに触れたい。
俺はひろかの頭をゆっくりと撫でた。
ツヤツヤの髪が、俺の手の動きを滑らかにさせた。
彼女が愛おしい。
彼女の笑顔も涙も全部自分のものにしたい。
俺のために笑って、俺のせいで泣いて欲しい。
俺といて幸せな気持ちになって欲しい。時には切ない気持ちになって胸が張裂けそうになって欲しい。
この綺麗な髪も、小さな手も、ふっくらした唇も、細い腕も、真っ白な太ももも。
「・・・俺ってマジで変態かも」
欲を言えば切りが無い。
そんな望みは決して言ったりはしない。
ただ、俺はもうひろかに恋をしてしまっている。
「・・・ひろか、俺さ・・・」
“お前の事が好きだ”
眠っているひろかに言うくらいならいいよな。
俺はふぅと一度息を吐いた。
「・・・なぁに?大地」
俺はひろかの頭の上で動いていた手を止めて、ひろかの顔を覗き込んだ。
まだ目を瞑ったままだった。
「いつから起きてたんだ?」
「うぅ~ん、10秒前くらいかな?・・・ねぇ、大地。もう少しだけ頭撫でててくれない?」
「えっ・・・?」
「昔ね、お父さんがこうやって頭撫でてくれたんだ。ママが…お母さんが初めて入院した日からずっと・・・」
俺は再び、ひろかの頭をゆっくりと撫でた。
すると、ひろかはありがとう。と笑って、目を瞑ったまま昔の事を話し始めた。