第43章 【澤村 大地】ヒーロー ~最後の文化祭~
ひろかside
──────────────────
「あっ!佐藤さーん!」
トイレから教室に戻ると、後ろの席の方で私を呼ぶ声が聞こえた。
そこには大地と菅原くん達、男女数人がいた。
私を手招きする菅原くん。
大地は大丈夫だから。と言うような表情で頷くので、私はゆっくりと大地の隣の空間に身を収めた。
「ねぇ、佐藤さんは菅原の衣装どう思う?」
机の上には衣装の写真数枚が置かれていた。
菅原くんか…なんか爽やかな感じだし…私が真剣に写真を見ていると、横から大地が一枚の写真を手に取った。
「スガはやっぱ、王子様じゃないか?あっ、でもこっちの執事も似合いそうだな!」
大地が嬉しそうに二枚の写真を菅原くんに見せていた。
「大地って…なんか変態っぽいよな」
菅原くんがボソっと言った。
私はその言葉がデジャブ過ぎて可笑しくなった。
「大地…変態…ぶっは!」
「おっおい!何笑ってんだよ!ひろかこのやろっ!」
大地が私の首に腕を回して、頭を拳でグリグリとしてきた。
「痛い!痛いよ、大地!!・・・あははは!」
それからしばらくして、大地から解放された私は、周りの空気が変わったことに気がついた。
「・・・なんだ!佐藤さんってそんな風に笑うんだ!」
みんなが私を見て嬉しそうに笑うから、私は恥ずかしくなって俯いた。すると大地が私の肩に手を置いて優しく笑いかけてくれた。
その日一日、いろんな人から話しかけられた。
元々人と話すのは嫌いじゃない方だけど、流石に疲れてしまった。
実行委員の仕事を終えて、大地と一緒に今日も図書館へ向かった。部活を続けるって決めた時から、どんなに疲れてても必ず少しはやるって決めたんだっていう大地は、本当に毎日ちゃんと勉強していた。
正直感心してしまうほど。
秋なり、図書館も少し寒くなってきた。
そろそろ膝掛け持って来なきゃなぁ。そんな事を考えながら、私は問題集を開き解き始めた。
あれ、私、寝ちゃった…の?
うっすらと目を開けると自分の腕と図書館の机が見えた。
頭には暖かくて、少し重みのある手がゆっくりと上下している。
背中も暖かい。肩には学ランがかけられていた。大地の匂いだ。私は頭を撫でられ、落ち着く大地の匂いに包まれて、また目を瞑った。
もう少しだけこのまま。