第43章 【澤村 大地】ヒーロー ~最後の文化祭~
「じゃぁ、うちのクラスはコスプレ喫茶でいいか?」
「賛成~」
HRでクラスの出し物も決まって俺たちは放課後、生徒会に提出する書類を作っていた。
「アイドル衣装・ナース服・セーラー服・軍服…。佐藤は何着るんだ?」
「えっ!?私は裏方でいいよ…」
「そうなのか?残念。佐藤なら全部似合いそうだけどな」
俺がそう言うと、佐藤が急に笑い始めた。
「えっ…なんか変なこと言ったか?」
「澤村くんって…意外と変態なんだね」
「はっ!?変態!?なんで???」
ケラケラ笑う佐藤を始めて見た。
「澤村くんはさ、このコスプレにしなよ!」
佐藤が指したのは、今流行っているアニメのコスチュームだった。
「大地…変態(隊)長…あははは」
「おい、その呼び方やめろ!」
俺たちは二人で笑いあった。あの遠征合宿の時に見せた佐藤がここにいた。
「まぁ、変態(隊)長は辞めてほしいが、大地って呼んでもらえるのは嬉しいかな」
俺は書類に目をやりながら、冗談っぽく本音を言った。
少しの沈黙の後に、佐藤が口を開いた。
「だっ…大地」
「んー?」
俺は内心テンパっていたけど、何も動じてないかのように書類から目を外さないまま返事をした。
「だっ…大地・・・変態(隊)長」
「おい!だからその呼び方やめろっての!」
またケラケラ笑っているけど、それが彼女の照れ隠しだってわかった。
「じゃぁ、佐藤はあれだな。ひろか隊員だな。俺の方が上司だ」
俺はどさくさに紛れて名前で呼んだ。
「なんで私が部下なの!隊員は嫌だよ!」
「じゃぁ…ひろか…?」
「なによ、大地…」
「ひろか」
「大地」
「ひろか」
「大地」
俺たちは何度もお互いの名前を呼び合った。