第6章 【東峰 旭】へなちょこの恋
キーンコーンカーンコーン
「東峰!メシ食おうぜ!」
昼休み前の授業の終わりを告げる
チャイムは何故か嬉しいものがある。
「あのー、すいません」
ふと、教室のドアを見ると佐藤さんの姿があった。
「委員長いらっしゃいますか?」
慣れない他のクラスに
少し声が小さくなっている彼女。
近くにいた生徒が対応をしていた。
「委員長?俺だけどー?」
いつもお昼を食べている友人がうちのクラスの委員長。
俺の前の席のイスに座りながら手をヒラヒラとさせていた。
その仕草に気づいたのか、佐藤さんは俺たちの元へやってきた。
「前回の委員会で提出するように言われてたの、このクラスだけ出てないみたいだよ?
…あっ!東峰くん。昨日はどうもありがとう」
何々?知り合い?と俺たちをからかうクラスメイトの話を聞いてるのか聞いてないのか、佐藤さんは話を続けた。
「今日の放課後までに提出だって。
とりあえず、伝えたからね?」
そう言って、教室を去ろうとした佐藤さん。
「えぇー!ぜってぇー終わんねーよ…佐藤さん手伝ってくんねー?」
半分泣きそうな顔で頼む彼に困った表情を見せた後、
佐藤さんは俺の机の上を見てニヤリと笑った。
「んー。東峰くんのパンと私のお弁当取り替えてくれるならいいよ」
もちろん、俺の意見なんて聞いてもらえず、委員長はイスを譲渡し、
佐藤さんは俺の向かえ側に座ってニコニコしていた。
「次は球技大会の種目のリストを…」
半べそかきながら隣の席で提出物を仕上げる友人。
向かえには俺のパンを頬張る佐藤さん。
なんて不思議な状況なんだ。
「私ね、購買のパンって食べてみたかったんだー」
嬉しそうに話しながら、俺の手元を見て吹き出していた。
「東峰くんがそのお弁当箱持つと小さく見えるね!…ぷ」
からかうなよー。と言う俺にごめんね?と笑うもんだから、何も言えなくなる。
「佐藤さんはいつもお弁当なの?」
「うち両親共働きだからねー」
「……じゃぁ、自分で作ってるの?」
うん。と当たり前のように返す彼女。
普通、共働きだから購買のパンなんじゃ?と疑問に思ったけど、
他にもたくさん佐藤さんについて
知りたい事がありすぎて、この話は終わりにした。