第6章 【東峰 旭】へなちょこの恋
晴れた昼下がり。
体育館の整備で久しぶりの休日。
「今度の合宿の買い出しも済んだし」
俺はぷらぷらと駅前を歩いていた。
「いいじゃーん、ね?遊ぼうよ?」
よくある駅前のナンパ。
俺は声のする方に目を向ける。
見て見ぬ振り。
目線をそらしたはずなのに、
無意識にもう一度視線を戻していた。
「あれは…」
咄嗟に2人組の男性に囲まれていた
彼女の方へ向かった。
「あっ!」
俺の存在に気づいた彼女が目線を上げる。
数秒後、ナンパ男達も後ろを振り返る。
「…………!」
近寄ったはいいものの、
何を言えばいいのか分からなくて
黙っていたら、
急に謝ってナンパ男達は逃げて行った。
「…………あぁ、大丈夫?」
頭をかきながら、彼女を見下ろすと、
少し固まったまま俺をじっと見ている。
「東峰…くん?」
「えっ、あぁ、そう!」
彼女の強張っていた表情は
いつもの笑顔に変わっていた。
「…ぷ。私服だとイメージ違うね」
そうか?と焦る俺をまた彼女は笑っていた。
彼女は佐藤ひろかさん。
進学クラスで、常にテストの上位者の常連だった。
すごく可愛くて、学年の中でも群を抜いていた。
佐藤さんと話すのは
スガや大地と一緒にいる時だけ。
クラスも違うから、なかなか会う機会もない。
廊下ですれ違っても、
佐藤さんはいつもたくさんの友達に囲まれてて、
話しかけるなんて全然出来なかった。